第十三話 手放してみて、ようやく分かったこと

本当に必要なものと穏やかに暮らすための生き方 人生後半の整え
本当に必要なものと穏やかに暮らすための生き方

年齢を重ねるにつれて、少しずつ手放してきたものがある。

若い頃は、できるだけ多くのものを持つことが安心につながると思っていた。
物も、予定も、人とのつながりも。
抱えられるだけ抱えていた方が、人生は豊かになるのだと信じていた。

だが実際には、持ちすぎるほどに心は忙しくなり、
どこか落ち着かない時間を過ごしていたように思う。

いつからだろう。
少しずつ、「減らす」という選択をするようになったのは。

無理に付き合うこと。
背伸びをすること。
誰かと比べること。

そうしたものを静かに手放していくと、不思議なことに暮らしの中に余白が生まれた。

余白ができると、人はようやく呼吸ができる。

以前より予定は少ない。
持ち物も多くはない。
それでも、どこか満たされている。

むしろ、いまの方がずっと軽やかだ。

人生は、何かを足していくことで豊かになるのだと思っていた。
だがどうやら、本当に大切なものは、
手放していく過程で浮かび上がってくるものらしい。

残ったものは、どれも静かで、確かなものばかりだ。

気を遣わずに話せる人。
心から落ち着ける場所。
急がなくてもいい時間。

それらがあれば、人生は十分に満ちていく。

若い頃には、「失う」という言葉にどこか寂しさを感じていた。
だがいまは、少し違う。

手放すことは、失うことではない。
これからを心地よく生きるための、整えなのだと思う。

抱え込まなくてもいい。
無理に増やさなくてもいい。

本当に必要なものは、驚くほど多くはないのだから。

これから先もきっと、
私は何かを手放しながら生きていくのだろう。

そのたびに暮らしは少しずつ軽くなり、
視界は静かに開けていく。

人生は、足していくことで広がるのではなく、
削ぎ落としていくことで、本来の形を見せてくれるのかもしれない。

手放してみて、ようやく分かったことがある。

それは——
人生に本当に必要なものは、思っていたよりずっと少ない、ということだ。

そしてその少なさこそが、
これからの時間を、穏やかに照らしてくれるのだと思う。

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