法務局へ行ってきた。
目的は、今住んでいる家の所有権移転の手続き——相続登記である。
長い間、この家には義父との暮らしがあった。
そして昨日、その歴史にひとつの区切りがついた。
手続き自体は、事前に準備をしていたこともあり、思っていたよりも穏やかに終わった。
書類を提出し、完了予定の紙を受け取ったとき、不思議と肩の力が抜けたのを覚えている。
振り返れば、ここまでの道のりは決して平坦ではなかった。
介護、施設探し、度重なる判断。
その一つひとつが、私たち夫婦の時間と気力を静かに削っていった。
けれど、人は不思議なもので、渦中にいるときには「大変だ」と思う余裕すらない。
ただ目の前のことを整え続けるだけだ。
やがて義父は旅立ち、葬儀や手続きが続き、気づけば昨日の相続登記にたどり着いた。
人生の大きな出来事というのは、派手に終わるわけではない。
多くの場合、役所の窓口で静かに終わる。
だが、その静けさの中にこそ、次の暮らしへ進むための余白が生まれるのだと思う。
帰り道、妻の表情がどこか柔らかく見えた。
きっと私も同じ顔をしていたのだろう。
大きな荷物をひとつ降ろしたような、そんな感覚だった。
これから先、特別なことは起こらなくていい。
ただ、穏やかに暮らしていけたらそれでいい。
相続登記を終えた昨日は、
私たちにとって「暮らしを整える節目の日」だった。
