少し立ち止まって、電話をかけた朝

少し立ち止まって、電話をかけた朝 ひと息
少し立ち止まって、電話をかけた朝

ここしばらく、進路について考えていた。
考えないようにしても、朝のコーヒーを淹れている間や、
何気なく窓の外を見ているときに、ふと浮かんでくる。

「次は、どうするんだろうな」

昔のように、勢いだけで決める気にはなれなかった。
それが年齢のせいなのか、
これまでに積み重ねてきた時間のせいなのかは、よく分からない。

ただ、軽々しく決めてしまうには、
少しだけ、背負ってきたものが多くなった気がしている。


少し前まで、ひとつの道を現実的に考えていた。
慣れ親しんだ仕事で、条件も分かっている。
声をかけてくれる人もいて、
戻ろうと思えば、たぶん戻れる。

それだけに、簡単には手放せなかった。

未練、という言葉が一番近いのかもしれない。
誇りもあれば、疲労もある。
「やり切った」と言い切れるほど、きれいな終わり方でもない。

胸の奥に、小さな引っかかりが残ったままだった。


一方で、まったく違う方向の話も、静かに進んでいた。

派手さはないし、
正直に言えば、収入面で大きな夢があるわけでもない。
けれど、人の話を聞き、状況を整理し、
困っている人の足元を一緒に確認するような仕事だ。

こちらの道のほうが、体は楽だろう。
ただし、その分、頭と気持ちは使う。

どちらが楽か、という話ではない。
どちらの疲れを、自分は引き受けられるのか。
そんな問いに近かった。


先日、関係先に電話をかけた。

書類に書いてある言葉だけでは、どうにも分からなくて、
少し迷った末に、勇気を出して直接聞いてみることにした。

やはり、電話してみなければ分からない。
制度としての説明と、
現場で実際に起きていることのあいだには、
微妙な、けれど大事な違いがあった。

人が足りていないこと。
長く続けている人がいること。
形式と現実が、なんとか折り合いをつけながら回っていること。

受話器を置いたあと、
胸の奥で固まっていたものが、少しだけほどけた気がした。


どちらの道を選んでも、
後悔がゼロになることは、たぶんない。

長く続けてきた仕事への未練は、今もある。
それを無理に消そうとは思わないし、
なかったことにもできない。

ただ、これから先の時間を考えたとき、
「何を使って働くのか」は、
少し変えてもいいのかもしれない、と思い始めている。

体ではなく、
経験や、言葉や、判断を使うこと。
それもまた、働くということなのだろう。


まだ、細かいことは決めていない。
しばらく考えながら、進んでみようと思う。

答えを急がず、
一歩ずつ、確かめながら。

そんな朝だった。

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